過去に存在し現在は絶滅した生物種が持っていた酵素の復元と有用酵素の探索


ancestral sequence reconstructione

祖先配列再構成法(復元法)は、過去に存在したがその後絶滅した生物種が持っていたタンパク質の 復元法である。概念自体は1960年代から存在したが、近年のゲノム情報の蓄積と安価なDNA合成により、 急激に実用化されてきた。祖先配列再構成法は、既に祖先タンパク質の耐熱性や基質特異性の推定に実績 があり、また、地球上の生命史や、生物圏環境の長期的な変化の推定を可能とした。さらに、工業的に有 用ないくつかの酵素が祖先型再構成法によって合成された。特に当研究室の最近の研究では、優れた耐熱 性を持ちつつ、活性化エネルギーが低く、天然の耐熱性酵素と比べてより低反応温度での触媒に適した祖 先型酵素の獲得に成功した。
 今後は、様々な年代の祖先酵素を網羅的に復元することによって、現存の天然酵素にはない、産業・工 業利用に最適な活性や性質を持つ酵素を探索する。現在は存在しない絶滅生物種が持った過去の酵素の有 用性、すなわち、現在は失われてしまった過去の酵素群のなかに「宝の山が眠っている」ことを示すこと ができれば、将来的には様々な酵素に祖先配列再構成を適用し、多くの有用な祖先酵素を合成することで 酵素の産業利用を劇的に推進できるだろう。カーボンニュートラルへの寄与や持続可能な開発目標(SDGs) の達成への貢献も期待できる。

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