早稲田大学 人間科学学術院
過去の生物そのものを復元・再生することは、現在の科学ではまだ容易ではないが、遺伝子、
あるいはタンパク質の復元・再生は可能になりつつある。 当研究室でも、すでにいくつかのタン
パク質について、現存のアミノ酸配列の比較からタンパク質の分子系統樹を作成し、その系統樹
を遡ることによって 生物の共通祖先が持っていたと推定されるタンパク質のアミノ酸配列を推定
した。この手法で推定された祖先型アミノ酸配列を持つタ ンパク質の多くは、高い耐熱性を示し
た。この結果は、祖先型タンパク質を持っていた祖先生物が高温環境に生育していた好熱菌または
超好熱菌で あったことを強く示した。
今後は、多くの種類の祖先型タンパク質を復元することが課題である。加えて、祖先生物が生息
した過去の地球環境について、温度以外の海洋pH、二酸化炭素と酸素濃度などを明らかにしていく
ことも期待される。将来的には、全生物共通祖先生物が持っていたと思われるタンパク質の 遺伝子
一式をすべて復元することで、全生物共通祖先生物そのものを復元するという夢のようなことにも
挑んでみたい。